最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)748号 判決 1948年11月16日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人中野増治同服部孝雄同西川義弘三名辯護人谷口弥一の上告趣意は末尾添付の書面記載のとおりである。
上告趣意第一點について。
被告人が控訴をした事件について第一審判決後被告人から被害者に被害の辨償ができた等被告人に有利の情況が生じた場合であっても控訴裁判所は必ずしも第一審判決の刑より輕い刑を言渡さなければならないものではなく、犯情その他諸般の事情によって第一審判決と同一の刑を言渡すことができるものである。そして、刑事訴訟法第四〇三條に所謂「原判決の刑より重い刑を言渡す」というのは判決主文における科刑を原判決にくらべて重くする意味であるから第二審において第一審と同一の刑を言渡すことは同條に違反するものではない。されば、論旨は理由がない。
同第三點について。
原審における昭和二三年三月一五日の公判期日が開廷されたものと認むべきことは、論旨第二點について説明したとおりである。そして、同日の公判調書によれば公開を禁じた旨及びその理由の記載がないのであるから同日の公判は公開法廷で行われたこと明かである。けだし、公判調書には公判が公開されたことを特に記載する必要はなく、公開を禁じた場合にその旨及び理由を記載すれば足りるのであって、このことは當裁判所の判例(昭和二二年(れ)第二一九號事件昭和二三年六月一四日大法廷判決)として示すところである。されば論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よって刑事訴訟法第四四六條に從い主文のとおり判決する。
以上は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)